中小企業診断士への挑戦

2018年 中小企業診断士試験の一次試験合格、二次試験不合格となった人が、2019年合格に向け挑戦する日々を記録するブログ。

成長戦略とは

こんにちは、tateです。



前回は、コンサルティングの方法についてご紹介しました。


コンサルティングを行う事で中小企業の力となる事が、中小企業診断士の目的ですが、コンサルティングはあくまでその『手段』でしかありません。コンサルティングの方法論と同じく重要であるものが、適切な成長戦略を描く事です。この成長戦略により、コンサルティングの方向性が定まり、各課題と大きな目標との整合性が高まります。


よって今回は、企業に対して行うコンサルティングの方向性を定める上で重要な、成長戦略〔企業戦略〕ついてご紹介します。



○成長戦略〔企業戦略〕の必要性


企業は永続する事〔ゴーイングコンサーン〕が究極の目的であり、その為に、問題に対し設定した課題を達成し続ける事で、成長を維持します。


ただ、企業の周囲にはありとあらゆる問題が存在します。それら全てを解決する事は不可能ですし、また闇雲に解決すべき問題を選択しても、それらを解決する事で、企業全体として結局何を達成したいのか、ハッキリしません。そこで重要になるものが成長戦略〔企業戦略〕です。


成長戦略とは、企業がどの様な活動を通じて付加価値を生み出すのか、その方向性を明示するものです。具体的には、『誰に、何を、どの様に提供するのか』を定義する事で、明示します。この成長戦略を立てる事で、企業がどこに向かって成長するのかが明らかになり、結果どの問題解決に取り組めば良いのかが、明らかになります。



○ドメイン定義の必要性


ただ、いきなり『誰に、何を、どの様に提供するのか』を定義したところで、命を受けた社員はどの様な範囲で戦えば良いのか分からず、各地に分散し、結局全滅…なんて事になりかねません。そこでまず、『どこで戦うのか〔則ちドメイン、事業領域〕』を定める事が、成長戦略立案において非常に重要です。このドメインを定める事により、意思決定を明確にし、経営資源を集中させ、組織を一体化する事ができます。


ドメイン定義で重要なポイントは、①誰に提供するか〔市場・顧客軸〕、②どんな価値を提供するか〔機能軸〕、③どのような技術・ノウハウを用いて提供するか〔技術軸〕について明確に定義する事です。この三軸はどれも、ドメインを定義する基礎になり得る為、対象企業の強みに合わせてドメイン定義する必要があります〔他社に無い有力な固定客・ロイヤルカスタマーを有するのであれば①市場・顧客軸、優れた製品・サービスを有するなら②機能軸、他社に無い独自の技術を有するなら③技術軸を基に、ドメインを定義する〕。


また、提供する『何を』については①物理的に定義〔事業をモノで定義〕、または②機能的に定義〔事業をコトで定義〕します。①物理的定義の場合、モノを提供すると考える為に分かりやすく、組織一体となって取り組みやすい反面、ドメインを下手に絞り過ぎるリスクがあります。②機能的定義の場合、コトを提供すると考える為、広くドメインを考えることができる反面、定義が曖昧となり経営資源が分散する〔組織一体となった活動ができない〕リスクがあります。




○4つの成長戦略


次に、定めたドメインを基に、則ちどの様な成長戦略を描くかについて考えます。有効な切り口として、新規市場or既存市場 × 新規製品or既存製品で成長戦略を考える、アンゾフの成長マトリクスがあります。


市場浸透戦略=既存市場×既存製品

新製品開発戦略=既存市場×新規製品

新市場開拓戦略=新規市場×既存製品

多角化戦略=新規市場×新規製品


これら戦略の内、多角化戦略に関しては、既存事業での経験を直接活かす事が難しく、選択する事がその他成長戦略と比較して難しい場合が多いです。


この多角化には、関連多角化と非関連多角化があります。関連多角化は、既存経営資源を活かせる可能性がある一方、事業ポートフォリオ的なリスク分散効果が低くなる可能性があります。一方非関連多角化は、既存経営資源を活かせない可能性が高い一方、事業ポートフォリオ的なリスク分散効果が高まる可能性があります。


4つの成長戦略の内、難しい多角化戦略を採る目的としては①獲得したい機会がそのドメインに存在する、②既存事業に迫る脅威を回避する、③組織スラック〔余力〕を活用する、④既存事業とのシナジー効果〔販売網相互利用等による販売シナジー、生産拠点相互利用等による生産シナジー、複数事業を一括管理する事による管理シナジー、リスクの高い投資を複数で行う事による投資シナジー〕が期待できる、があります。



○複数事業の管理〔PPM〕


複数事業を有する企業の場合、儲ける事業により内部留保を増やし、それを新事業開発投資に充てる流れを作る事が、企業成長の永続に繋がります。この管理手法として、PPM〔Product Portfolio Management〕があります。


PPMでは、市場成長率×市場相対シェアのマトリクスにより、事業を分析します。市場成長率は、製品ライフサイクルに基づき設定されたもので、ライフサイクル前半の高成長時期〔導入期、成長期〕においては、より多くの投資が必要〔Cash Out多〕で、ライフサイクル後半の低成長期〔成熟期、衰退期〕においては、より少ない投資〔Cash Out少〕となります。また、市場相対シェアは、経験曲線効果〔累計生産量が増えれば増えるほど、技術が習熟し、より高品質・低コストで生産できる様になる為、Cash Inが増える〕に基づき設定されたもので、市場相対シェアが高い場合においては、より多い収入〔Cash In多〕が期待でき、市場相対シェアが低い場合においては、より少ない収入〔Cash In少〕しか期待できません。


これらの特徴を組み合わせる事で、事業を以下四つに分類する事が可能となります。


問題児=高成長時期×低市場相対シェア〔CO多×CI少〕

花形=高成長時期×高市場相対シェア〔CO多×CI多〕

金のなる木=低成長時期×高市場相対シェア〔CO少×CI多〕

負け犬=低成長時期×低市場相対シェア〔CO少×CI少〕


 繰り返しになりますが、金のなる木で得たキャッシュを如何に、有望な問題児に投資できるかが重要です。



企業は、成長する方向性をドメイン定義により明らかにし、そこに向かうための戦略〔アンゾフの成長マトリクス〕を立案し実行する。事業を複数有する場合は、投資資金源となる内部留保を増やす主力事業と将来の主力事業の種をバランス良く保持する。以上により、成長を実現します。


…どうでしょうか?成長できそうですか?


たしかに、成長する方向性が定まった為、成長できそうな気がするかもしれません。しかし、このまま実際に実行段階に突入したならば、おそらく皆、戸惑うはずです。


目の前の敵と、具体的にどうやって戦えばいいんだと。


なぜなら成長戦略では、具体的な戦い方が記されていないからです。成長戦略は、あくまで企業全体が組織立ってどう動くべきかを示したものです。冒頭、成長戦略の後ろに〔企業戦略〕と入れた理由もここにあります。


成長戦略のみ立て、後の行動は全て社員に丸投げだと、それはまるで、武器も渡さず、所定の戦場に兵士投げ出し、決められた敵に兎に角突っ込ませる様なものだと言えます。もちろん、そんな状況でも、飛び抜けた個体は勝利を手に入れることが出来るかもしれませんが、もし組織としての勝利を、そんな個体の大量発生に掛ける経営者がいるのであれば、その組織は長く続かないでしょう。


〔こう分かりやすく書けば、『んなバカな、そんなことするやついないだろう』と思うかもしれませんが、見栄えの良い大枠戦略〔先代が作った戦略を、表現変えて使い回す、成長戦略の紛い物〕を大袈裟に打ち立てるだけで、経営審議会が終われば何事もなかったかの様にまた、弱者を消費しながら事業を回し、他者の悪口をツマみつつ、夜な夜な空接待に勤しむ人々を、ウンザリするほど見てきました〕


敵に勝つ方法。それは、敵と競争する上での戦略、則ち競争戦略に基づき戦う事です。敵に無い、より優れた武器を用いて戦う事が重要である為、差別化戦略とも言います。


次回は、この競争戦略についてご紹介します。



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